2014年1月17日金曜日

なぜ「現代やまとことば」か?

巨大な言語である日本語には、日本語の中でも共通語が必要ではないかと思っています。


母語話者として日本語を使っている人は、日本人の人口よりやや多いと言われています。
世界中の言語の中で9位に位置する人数となっており、決して少ない数ではありません。

ところが、日本語話者の間であっても、会話の理解の割合は、他の言語話者に比較すると少ないと言われています。

つまりは、日本語話者同士の会話であったとしても、決して言いたいことがきちんと伝わっていることではないことを示しています。



その原因としては、日本語が他の言語に比べて圧倒的に表現が豊かであることがあります。
また、
民族の性格として、自分のことを多く語ることを良しをせず、「行間を読む」というような言語外のニュアンスを推察することを重んじるからだと言われています。

ほとんどの人が同じような社会生活を行なっているときは、それでも何の問題もなかったのだと思います。
ところが、
社会の層や幅がどんどん広がるにしたがって、自分の知らない社会が広がっていきます。
より細かくなり専門化していきます。

様々な専門用語が生まれ来るとともに、それまでの言葉も使われ方が変わっていきます。

結果として、同じ日本語のカテゴリーではあっても自分の理解しにくい言葉が増えていくことになります。

特に、漢字はとても造語力のある文字ですので、新たな言葉は日々生まれていると言ってもいいくらいです。



私は「現代やまとことば」として、ひらがな+訓読み漢字による表現を推奨しています。
あまりに便利すぎる漢字に頼ることで、音読みによる同じ音が増えてしまい意味が伝わりにくくなっていると考えているからです。

なぜ、訓読み漢字なのか?
漢字による表現を確認することで、その理由をみていきたいと思います。


日本人は、漢字を使いこなすことによってさまざまな文化を取り込んできました。

漢字は表意文字ですので、文字として見ただけでその意味するところを感じ取ることができます。
しかも、
音読み漢字は簡単に重ねていくことができますので、何文字繋がろうともその意味するところは容易に理解できます。

反対に、漢字がたくさんつながっている言葉ほどその実態をより具体的に正確に表していくことができます。
役所や会社の部署や役職などがそのいい例ですね。


ところが音読み漢字がたくさん重なると、文字としては正確さが増したとしても音として聞いたときには「?」となることが多くなります。

中国語を分からない日本人が中国語の発音を聞いたときに、一生懸命に漢字を思い浮かべようとしていることと同じことが起こります。

音読み漢字は文字として見える場合にはその力を充分に発揮しますが、音としてのみ伝える場合にはとても理解しにくくなるのです。

日本語の発音の基本音は母音を軸とした「ひらがな」の音でできています。
他の言語に比べて基本となる音の数が極めて少なくなっています。

その分、同音異義語が多く存在することになります。
この現象は、音読み漢字において典型的に見受けられます。


馴染のない音読み漢字の重なった言葉を聞いたときには、頭の中でその音を持った漢字を探します。
それが意味のない文字の組合せしか浮かばない場合に「?」となります。

また、
発信側の意味する漢字の組み合わせと異なったものを思い浮かべることもあります。
この場合は、完全な誤解として理解されてしまいます。



また、
音読み漢字には動詞がほとんどありません。
思いつくものは、「論ずる」、「牛耳る」、「講ずる」、「動じる」などでしょうか。

音読み漢字は、そのほとんどが名詞なのです。

これには、漢語の導入前に存在していた文字のない時代の言葉である「古代やまとことば」の存在が大きいです。

漢語導入以前の「古代やまとことば」においては、基本動作を表す言葉は既に存在していました。
その言葉を書き表す文字として漢語を利用しました。
その漢語の読み方が訓読みなのです。

文字としては漢語(漢字)を使いながら、読みとしては「古代やまとことば」を元にしたものが訓読みなのです。

漢字の訓読みは、文字の無かった「古代やまとことば」に対応した充て字なのです。

ですから、訓読みは音では「やまとことば」(ひらがば)になるのです。
音だけで理解できる言葉になるのです。

反対に、訓読み漢字から「古代やまとことば」で使われていた言葉のニュアンスを知ることができます。

例えば「かく」と読む漢字を並べてみましょう。
書く、描く、欠く、掻く、画く、などが出てきます。

これらすべてに共通する動作なり動きが「古代やまとことば」における「かく」という行動になります。


「現代やまとことば」、ひらがなだけで表記できる言葉+訓読み漢字で表記する言葉は音で聞こえるものはすべてひらがな(やまとことば)になります。
漢字を探す必要のない言葉です。
音だけで意味が理解できる言葉です。

伝える環境や条件が厳しくなればなるほど「現代やまとことば」が生きてきます。

時間が少ない場合、視覚が使えない場合、音しか伝えられない場合など文字を補助にできない場合は決定的になります。

一番わかりやすいのは歌の世界です。
人々の心に残る歌の歌詞は、ほとんど「現代やまとことば」が基本となっています。

「現代やまとことば」だけでできている歌詞もたくさんあります。


日本語は素晴らしい言語です。
世界でも有数の表現力を持っています。

それだけに、正確な理解をしてもらうには相手の日本語をよくわからないと伝え方が難しい言語でもあります。

日本語の共通語としての「現代やまとこば」の価値は、ますます高まるのではないでしょうか。