2014年2月18日火曜日

外国の言語教育(4)・・・ドイツ

今回はドイツの言語教育(国語教育)について見てみます。

今までと同様に義務教育の体制から見てみますが、ここにもマイスターの国らしい職業学校の充実や資格の重視といった傾向が見て取れます。


ドイツもアメリカなどと同様に連邦国であり、基本的なことについては連邦憲法によって規定されているものの、義務教育の実際の運用については、各州ごとの憲法や教育関連法によって規定されています。

州ごとに文部省機能の組織が設けられており、教育政策の立案・実施を行っています。

州による学校制度や教育政策の違いを調整する機関として,各州文部大臣会議が常設されており,そこでの協定や決議を通して,基本的な枠組が確保されています。
連邦には教育研究省が設けられていますが,その権限は高等教育や学術研究など一部に限られており,初等中等教育に関する権限はほとんど有していません。



全16州のほとんどで満6歳より義務教育が始まりますが、親の申請によっては5歳からの早期就学を認めているところもあります。

ほとんどの州の就学年齢は6~15歳の9年間となっていますが、一部の州では16歳までの10年間となっているところもあります。

ドイツの義務教育の特徴は、初等教育である基礎学校の4年間を終了すると、つづく中等学校が生徒の能力や適性に応じて3つの学校から選択することが挙げられます。

5年制が基本の基幹学校、6年制の実科学校、6年制のギムナジウム初級・中級の3つの選択肢があります。

基幹学校は職業訓練校的なものです。
義務教育の範囲内として、日本の小学校高学年から中学校に相当する5年間をこれに充てます。
最終学年への進学についてのみ試験があり、卒業後は中卒相当の資格が与えられます。

他の学校への編入が困難であることや、高等教育への進学希望者は基幹学校を選択しないため、この学校の卒業者の多くは15歳前後で労働者として就職します。

実科学校は、基幹学校と同じく職業訓練学校として位置づけられている学校で、期間は6年制となります。
教育課程は実務訓練だけではなく高等教育準備に関する課程も行われるため、ギムナジウム進学に失敗したけれども高等教育への進学をあきらめていない者が進む場合が多いようです。

卒業後は中卒相当の資格と同時にギムナジウム編入試験を受ける資格も与えられます。
しかし、編入試験は実科学校内の成績優秀者でなければ合格が難しいとされており、編入試験に漏れた生徒は基幹学校の場合と同様に、若年労働者として社会に出ることになります。

高等教育へ進む事を希望する場合は、ギムナジウムという8年制の長期教育過程へと進学することになります。
初級・中級の6年間は後期初等教育を義務教育の範囲で下級生として受けたあとに、上級生として中等教育を受ける形となります。
そこにはきっちりとした入学試験があり、レベルの高いギムナジウムを目指して、州を越えて受験する生徒もいるようです。

日本における中高一貫教育に小学校の高学年を加えたようなきわめて長大なものになります。
教育を受ける生徒にとっては子ども時代のほとんどの期間を過ごす重要な場所となるため、しばしば文学作品の舞台となることもあります。

卒業後はアビトゥーアと呼ばれる大学入校資格を取得する試験への受験資格を与えられます。
このアビトゥーアが実質的な卒業試験となり、同試験合格によって正式に中等教育を完了したと見なされ、日本における高卒資格に相当する社会的地位が与えられます。

一部の州では義務教育後半の3つの機能の区分をなくした、日本の中学校に当たる統合学校が設けられていたり、基幹学校と実科学校の両方の課程を有する学校などもあるようです。




義務教育に限っても学校種ごとに多様な教育カリキュラムがあり、さらには州ごとの独自性も発揮されるために、実に多様な国語教育が展開されていると言えます。

多様な国語教育のカリキュラムを大雑把に概観すると、ドイツの普通教育国語科カリキュラムは、日本の国語科の領域構造に類似していると言えると思います。

大きな項目は①話すこと/傾聴すること、②書くこと、③読むこと/文学メディアとの交流、④言語の省察という4つの学習領域から構成されています。(初等学校4学年)

更に、初等教育としての基礎学校のドイツ語のカリキュラムは,話すことと聞くこと,書くこと,読むこと,言語を調べることといった領域から構成されています。

基本的な分野としては、「読本」と「言語」となっており、教科書もほぼこれに沿ったものとなっているようです。
基礎学年の1年においては、両方を統合してフィーベルと呼ばれるドイツ語入門の教科書になっているものもあるようです。


基本的な指導テーマが設定されており、そこには子供たちが生活する世界における活動能力をつけていくことが求められています。
子どもの生活世界を明らかにする,子どもの経験を拡大する,子どもに生活世界で行動する能力を与えるという目標をもって,子どもに生活世界で生き抜いていく力を付けることを中心としています。

第1学年で「わたしであること」や周りの自然にあるものの言葉などが扱われており、この辺では日本の小学1年との差はあまりないように見受けられます。

第2学年になると教科書で扱われている内容も大きく変わってきており、明らかに基礎的な言語の習得を完了していることが伺われます。
この段階の教科書で使われてる語彙数が約4,000となっており、基礎的な言語習得においてはほぼ完了していることを示していると思われます。

「わたしができること」や「時間はどのように過ぎるのか」を話し合うことも始まっており、言語の習得段階からすでに言語技術の習得段階に入っていいることが伺えます。

第2学年で使用するある国語科教科書の指導要領には、「あるテーマについてほかの人と話し、自分の意見を述べ、民主的態度で相手の話を聞く。」とあります。

更には、「わかりやすく話しをし、人の言っていることを理解しようとして、話が続けられる。」ということもあります。




ドイツの教室の生徒数は二五名前後、一授業時間は45分となっています。
授業に対する宿題の比重が極めて高く、宿題を準備していなければ授業にはついていけないことになります。

また、教室の座席配置も碁盤の目状ではなく、教卓に対してコの字であったり、工房・アトリエのごとく独特の幾何模様を織り成したり、一斉授業と学習者間の協同性を重視したペア活動やグループ活動とを柔軟に交代できるようになっているようです。

初等教育の4年間で、基本的な言語技術までの習得を終えているものと考えることができそうです。


後期中等教育段階での普通国語科教科では「話すこと」「書くこと」について、情報伝達やプレゼンテーション、論証やスピーチを軸とした実践修辞学、意見文や文学解釈文の作成が中心となってます。

「読むこと」では文学史を背景とした文学作品やメディアの解釈が、「言語の習得」では文法と並んで、言語史や言語の機能など言語学入門が教科内容の重点を形成しています。

後期の段階で自国の言語について言語学として取り組む段階に至っているわけですね。


極めて多様な義務教育体系を持つドイツでは、義務教育と言えども実際の言語技術については生徒の進む社会に応じた対応になっているということができます。

そのための一般的な言語技術については、初等教育の4年間ですでに習得が終わっているものと考えることができると思います。


改めて日本語の大きさと習得の難しさ、必要時間の長さを思わずにはいられませんね。