やることは同じでも、頭の中に残る印象とその後の行動が違ってくる表現があります。
「ネガティブワードを使わないようにしましょう。」という場合と、「ポジティブワードで表現しましょう。」という場合では、聞いた人の頭の中に起こる反応が異なるようです。
(参照:ポジティブワードの威力)
「ネガティブワードを使わないようにしましょう。」といった場合には、使うべきポジティブワードに対してよりも、使わないようにするネガティブワードに対しての意識の方が強くなってしまいます。
使わないようにしたい方に意識が向いてしまうので、使った言葉を確認するときにナガティブワードになっていないかどうかを確認することになります。
常に、ネガティブワードに対しての意識が頭の中に残ってしまい、ネガティブワードに対しての感覚の方が鋭くなってしまいます。
せっかく、ネガティブワード→ポジティブワードの置き換えを行なおうとしても、意識はネガティブワードの方に強く反応してしまい、ポジティブワードに置き換えることの効果が減ってしまいます。
結果として、置き換えるべきネガティブワード探しをしていることになってしまいます。
「ポジティブワードで表現しましょう。」といった場合は、それに比べて作業自体が明るい雰囲気で行われます。
やっていることは同じことです。
ナガティブワード→ポジティブワードの置き換えなのですが、意識がポジティブワードの方にあります。
ネガティブワードという言葉も出てきますがポジティブワードがより強く意識されているので、ネガティブワード探しではなくポジティブワード探しの活動が進んでいくことになります。
不思議なことですが、これが継続していくとわずか数日のうちにとても大きな差が出てきます。
新人研修の初日でチーム別に①「ネガティブワードを使わない。」と意識させたところと、②「ポジティブワードを使おう。」と意識させたところを作ってみました。
4日間の研修期間でどんなことが起きたでしょうか。
①「ネガティブワードを使わない。」チームもポジティブワードを使っていくわけですが、ネガティブワードが出てきたときの指摘の仕方がきつくなっていきました。
人が使うネガティブワード探しになって行き、あら捜し的な雰囲気も出てきたりします。
お互いがネガティブワードを使わないように牽制をし合い、積極的な方向に向きにくくなっていきます。
発表の内容もこじんまりとした当たり障りのない内容になっていきます。
一方、②「ポジティブワードを使おう。」チームの方は、ネガティブワードにあまり意識がいきません。
出てきたポジティブワードをお互いに認め合い、使い方の工夫をしていきますので、ポジティブワードによる冗談も飛び出すようになります。
課題についての話し合いも明るい雰囲気になっており、一人ひとりの参加の状況もどんどん積極的になっていきます。
課題についてのチ-ム回答も積極的な挑戦的な内容が増えていきます。
研修そのものを楽しむ雰囲気も出てきます。
ネガティブの否定はポジティブになるのですが、そこにはどうしてもネガティブが意識されてしまい結果としてのポジティブよりもベースとしてのネガティブがより強く刷り込まれてしまうようです。
多少のニュアンスのずれはあったとしても、ひとつのポジティブワードの投げかけが連鎖を起こすような環境ができたほうがいいようです。
不思議なことが起こってきます。
②「ポジティブワードを使おう。」チームに積極性に加えて自主性が出てくるのです。
同じ課題を与えても、自分たちのものとして捉えて考えるようになります。
自分たちの意見として「・・・と思う。」「・・・したい。」が増えてきます。
一般的な物差しや評論的な内容ではなく、自分たちで考えた自分たちの言葉で語ろうとしてきます。
特に後半は、課題の内容も自分の意思を問うものだったので一段と差が目立ちました。
なかなか自分のこととして捉えることができないチームが多い中でも、チーム全員が一人ひとりの言葉で自分の考えを語りだしたときはびっくりしました。
このチームは課題検討以外の時でも、遊びで普段の会話をできるだけポジティブワードで表現していたチームです。
たった4日間でもこれだけの効果が出たことは大きな発見でした。
もちろん最後はすべてのチームに対して「ポジティブワードを使おう。」でフォローしておきました。
言っている内容ややっていることは同じでも、どこを意識するかによって効果が違ってくるんですね。
何人もの生徒が同じ先生から教わっても、全く違う傾向を示すのはこういうことなのでしょう。
どうしても結果としての行動に焦点を合わせがちになってしまいますが、同じ結果に対しても何を意識していたかによっては、それ以降の活動に差が出てしまうことになります。
今やろうとしていることに対して何を意識するか、少し考えてみることはとてもいいことのようですね。
そこに楽しみややりがいが見つかったとしたら、こんなに面白いことはないですね。