2016年3月2日水曜日

「現代やまとことば」を経験する(2)

先回に続いて「現代やまとことば」の一端を見てみましょう。

同じ例題を使用してみたいと思います。

「IT技術の進展により、様々な知的資源、文化資源をデジタル化して保存、発信する「デジタルアーカイブ」が脚光を浴びています。」
これを文節で分けみたものが以下の内容でした。

IT技術の/進展により、/様々な/知的資源、/文化資源を/デジタル化して/保存、/発信する/「デジタルアーカイブ」が/脚光を/浴びています。

先回の「IT技術」に次いで、今回は「進展」をみてみます。
(参照:「現代やまとことば」を見る(1)

この言葉をひらがな言葉に置き換えるにはどんな言葉を持ってきたらいいでしょうか。

国語辞書的には「事態が進行して新しい局面が展開すること」とあります。


同じような言葉に発展、発達、進化などがありますが、これらとはどこが違うのでしょうか違わないのでしょうか。

今回の文章の意図からすればどの言葉を使ってもほとんど問題ないと思われます。

この文章から読み取った意図を私が「現代やまとことば」で置き換えるならば単に「すすんだ」とすると思います。

「IT技術の進展により」は私の「現代やまとことば」で置き換えてみると以下のようになります。

「すぐに使える形でいろいろなものが残しておくことができるようになってきたやり方(いわゆるIT技術)が進んだことによって」


全体の意図を考えれば語順から言葉まですべて話し言葉として変えてしまいたいところですが、ここでは例題としてできるだけ本文で使われた言葉に忠実に置き換えを中心にやってみたいと思います。

そうはいっても、現実に話し言葉ではなく文字が見えてしまっているのでその効果は実感しにくいかもしれませんね。

できたら、誰かと話し言葉でやってみて欲しいと思います。


漢字で書かれている言葉は比較的ひらがな言葉にしやすいのではないかと思います。

その漢字自体が訓読みを持っていることが多いからです。

まずは単純にその単語を訓読みで表現してみてから伝えたいことと合っているかどうかを見てみてください。


もっとも、その訓読みの意味を自分なりに持っていなければ伝えることもできないと思いますので、言い換えた訓読みが自分でもピンと来るものでなければなりません。

「進展」を訓読みにすると「すすむ」と「のびる」となります。

「のびる」の訓読みは常用漢字にはありませんので馴染みのないものであり訓読みにしても分かりにくいものとなります。

「すすむのびる」としてもいいのですが「すすむ」は意味として十分に「のびる」を含んだものとなっています。

とくにその前の言葉にやり方(技術)という言葉があるので「すすむ」のひとことで十分に「進展」に込めた意図を反映できることになります。


先回にも説明したようにひらがなは単語同士の関係や論理を構成する大切な役割があります。

ひらがなを消してしまって並べた単語群は、漢字やカタカナ・アルファベットなどの目を引く文字が多くてどうしても意識がいってしまうようになってしまいます。

しかし意図として伝えたいことは単語同士の関係を中心とした論理であり気持ちであり状況なのです。


この例題に話し言葉と書き言葉の違いの特徴がよく現れている箇所がありますので触れておきたいと思います。

同じような内容で二ヶ所あります。

使い方としては句点「、」の使い方になります。

「知的資源、文化資源を・・・」の部分と「保存、発信する・・・」の部分になります。


話しことばとしては出来るだけ避けたい表現になります。

名詞を句点で区切ってしまうやり方は要素を列記する場合などによく使われます。

これは、文字として表現するときにのみに有効であって話しことばには使わない方がいい表現です。


音として瞬間に消えていく表現である話し言葉は各要素の関係をできるだけ早い段階で確定させてあげることが分かりやすさにつながります。

文字になっている場合に比べると後から要素同士の関係を確認することがとても難しくなるからです。

「知的資源、文化資源を・・・」と話してしまっては知的資源と他の要素との感が分かりにくくなってしまうのです。

とくにすぐ後に続く文化資源との関係がしばらく後にならないと分からないのです。


この場合は「知的資源文化資源」「知的資源文化資源」のようにひらがなの力を使うことが必要になる場面です。

この場合は二つの要素が同じ位置関係で並んでいますので並列の閑にあることが「と」「や」によってすぐわかるからです。

この例は文字で表現する場合であっても句点は避けたほうがいい場面です。

文字で表現する場合であってもこの例は要素の並列的表記ですので「知的資源・文化的資源」として中点「・」を使った方が良いと思われます。


同じことが「保存、発信する・・・」にも当てはまります。

話しことばとして表現するには「保存発信する」としてみたり「保存して発信する」「保存したり発信する」とした方が伝わりやすいことになります。


表現技術としての体言止め(名詞形で終わらせる表現)は文字という読み返すことが可能な表記方法において有効な方法です。

その場で消えていってしまう話し言葉においては要素同士の関係をできるだけ早く確定させてあげることが大切になります。

箇条書きのように要素のみを並べて話しをすることは聞き手にとっては理解するための負担を強いることになります。

きちんと伝えたかったり長い話においては出来るだけ避けたほうがよい表現になります。


「現代やまとことば」でひらがなことばによる表現を心掛けていると自然とこの感覚が身についていきます。

要素としての単語をひらがなことばで置き換えるだけではなく、要素同士の関係をわかり易くするためのひらがなの使い方も自然と行なうようになってくるからです。


実は、形容詞や動詞は漢字を使用した言葉であっても訓読み使用が圧倒的に多いのです。

特に基本的なことを表す言葉についてはほとんどが訓読み漢字かひらがな言葉になっているのです。

漢字熟語に「する」を付けた動詞も多く存在していますが、それらはもともとの日本語の感覚になかったものが多くなっています。

もともとの漢字熟語の名詞に「する」をつけて動詞化したものであり訓読み漢字やひらがなことばの基本動詞とは異なった感覚を持ったものとなっています。

感覚としては「する」のみが基本動詞であって、その前の漢字熟語は「〇〇をする」という感覚になっているものとなっています。


その他の修飾語としても〇〇的、〇〇風、〇〇化など新しい言葉を作るにはもってこいの表現方法があり、基本語としての形容詞とは感覚の異なったものとなっています。

無作為に選んだこの例文にはいろいろな参考になるものが含まれていました。

話し言葉としては効果の無い表現としての句点の使い方や「」による協調の方法もその一つです。

それらを補う方法はひらがなの使い方にしか求めることができないものです。


言語の認知としては文字よりも話し言葉が優位なのは自明の理です。

話せても書けない言葉がたくさんあるのがわかりやすい例です。

言語としての日本語が持っている話し言葉の音はひらがなだけです。

漢字もカタカナもアルファベットも文字としての効果しかないものです。


言語のコミュニケーションは口頭によるものが文字よりも優先します。

あらためて日本語の口頭言語は「ひらがな」であることを知っておきたいですね。






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